米国SOX法適用会社の内部統制報告書

米国SOX法(US-SOX)適用会社の一つである日立製作所の内部統制報告書を見てみる。

1【財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項】

当会社は、財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令(以下「内部統制府令」という。)第18条の規定により、米国において要請されている内部統制報告書の用語、様式及び作成方法に準拠して本内部統制報告書を作成している。
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2【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項】

当会社の経営者は、平成21年3月31日時点における当会社の財務報告に係る内部統制の有効性を評価した。評価に際し、当会社の経営者は、米国トレッドウェイ委員会支援組織委員会が公表した「内部統制―統合的枠組み」で確立された規準を用いている。
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3【評価結果に関する事項】

当会社の経営者は、これらの規準をもとに、平成21年3月31日時点の当会社の財務報告に係る内部統制は有効であるとの結論に至った。
 
4【付記事項】

内部統制府令第18条の規定を適用しないで作成する場合との主要な相違点は、以下のとおりである。

1.内部統制府令第18条の規定を適用しないで作成する場合には財務諸表及び財務諸表の信頼性に重要な影響を及ぼす開示事項等を評価の範囲とするが、米国において要請されている内部統制報告書では、有価証券報告書における「第一部 企業情報 第5 経理の状況」に掲げられた連結財務諸表の作成に係る内部統制のみを評価の範囲とする

2.内部統制府令第18条の規定を適用しないで作成する場合には持分法適用関連会社が評価の範囲に含まれるが、米国において要請されている内部統制報告書では評価の範囲に含まれない

次に「内部統制府令第18条」を引用する。

第五章 雑則

第十八条  米国預託証券の発行等に関して要請されている用語、様式及び作成方法により作成した連結財務諸表(以下「米国式連結財務諸表」という。)を米国証券取引委員会に登録している連結財務諸表提出会社が当該米国式連結財務諸表を法の規定による連結財務諸表として提出することを、金融庁長官が公益又は投資者保護に欠けることがないものとして認める場合には、当該会社の提出する内部統制報告書の用語、様式及び作成方法は、金融庁長官が必要と認めて指示した事項を除き、米国において要請されている内部統制報告書の用語、様式及び作成方法によることができる
財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令

すなわち、すでに米国SOX法の適用をうけている日本の上場会社は、金融庁の実施基準によらず、米国の基準で財務報告に係る内部統制の評価を行ってもよいとの例外規定である。日米の基準に大きな差異がなければ特に問題はないが、以前ここの日記でも指摘したように*1、財務報告の範囲(日本はいわゆる非財務情報が含まれる。米国では含まれない。)、持分法適用会社の取扱い(日本では評価対象事業拠点に含まれる。米国では含まれない。)の2点について大きな差異がある。
にもかかわらず、内部統制府令第18条によって、米国SOX法適用会社は、日本で義務付けられている実施基準の適用を免除されているのである。