「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(公開草案)」に対する意見

企業会計審議会内部統制部会の公開草案の公表について
企業会計審議会内部統制部会(部会長 八田進二 青山学院大学教授)では、昨年12月に公表した財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準案を実務に適用するとした場合のより詳細な実務上の指針(実施基準)の作成を検討してきました。今般、当部会の下に置かれた作業部会(座長 橋本尚 青山学院大学教授)が作成した実施基準案を基に審議を行い、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(公開草案)」を取りまとめ公表し、広く意見を求めることといたしました。

本公開草案についてご意見がありましたら、平成18年12月20日(水)17:00(必着)までに氏名又は名称、住所、所属及び理由を付記の上、郵便、FAX、インターネットにより下記にお寄せください。ただし、電話によるご意見はご遠慮願います。

なお、頂戴したご意見につきましては、氏名又は名称も含めて公表させていただく場合があるほか、個別には回答を致しませんことを、予めご了承ください。
http://www.fsa.go.jp/news/18/singi/20061121-2.html

〆切当日になって、何とかパブリックコメントを提出。個人の意見だが、何とか読んでもらいたいとの一心で書いた。

「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(公開草案)」に対する意見

1.全般

財務報告という公共性の高い情報の信頼性を確保するためには、企業に対して「一定の水準」を要求する必要があるとの立法趣旨に鑑み、可能な限り具体的な基準を示すことが極めて重要である。この点、今回の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(公開草案)」(以下「実施基準案」と表記)全体にわたり、内容が抽象的で、実務に適用可能なレベルの基準になっていないと考える。各社の自主的な判断に委ねた場合、評価の方法、判断基準にバラツキが生じるなど、実務上の混乱が予想され、また、結果として投資家に対する公正な判断材料を提供することが困難となる懸念がある。

2.「内部統制の重要な欠陥」について

「内部統制の不備」のうち、「重要な欠陥」についてはこれを内部統制報告書に記載することが義務付けられるとともに、虚偽記載等に対して罰則が課せられることになっている。しかし、何を「重要な欠陥」とするかの判断基準が明確でないことから、例えば、経営者が「重要な欠陥」を認識できない場合や、逆に虚偽記載を恐れるあまり、軽微な不備をも「重要な欠陥」とみなして過剰に開示するといった混乱が予想される。

3.内部統制の限界について

「内部統制は、組織の経営判断において、費用と便益との比較衡量の下で整備及び運用される」(実施基準案22ページ)こと等から、内部統制には固有の限界がある。従って、内部統制の限界によって、当該企業における内部統制の重要な欠陥を発見できない可能性がある。その場合、当該企業の内部統制報告書にはその重要な欠陥が記載されないこととなるが、その原因は内部統制の限界なのであるから、内部統制報告書の虚偽記載に該当しないことを実施基準案に明記するべきである。そもそも内部統制に重要な欠陥を内包する企業は、当該重要な欠陥を発見ないし評価できない可能性が高い。このような企業と、内部統制を費用と便益との比較衡量の下で整備及び運用した結果、重要な欠陥を認識することができなかった企業を等しく虚偽記載の処罰対象とすることは、不合理である。

4.全社的な内部統制の評価項目について

「財務報告に係る全社的な内部統制に関する評価項目の例」(実施基準案28〜30ページ)として、
・経営者は、信頼性のある財務報告の作成を支えるのに必要な能力を識別し、所要の能力を有する人材を確保・配置しているか。
・信頼性のある財務報告の作成に必要とされる能力の内容は、定期的に見直され、常に適切なものとなっているか。
・経営者は、従業員等に職務の遂行に必要となる手段や訓練等を提供し、従業員等の能力を引き出すことを支援しているか。
等については、もっぱら評価主体の主観によらざるを得ない内容であり、客観的評価になじまない。評価項目の例として適切でないため、削除すべきである。

金融庁サイトの入力フォームは行数制限があるので、各項目を分割して4回送信。どうやら、回数制限はなかった模様。以上。