反社会的勢力との関係遮断

ひさびさの会社法ネタで、本日付の日経新聞の記事から。

企業の倫理規定、「暴力団との決別」明記は61%
 ほとんどの企業が「暴力団や総会屋など反社会的勢力との関係を絶つべきだ」と考える一方で、社内の行動指針や倫理規定に「関係遮断」を明記していたのは61%にとどまっていることが22日、警察庁と全国暴力追放運動推進センターが実施したアンケートで分かった。

 昨年5月施行の会社法で、健全経営を確保するための「内部統制システム」策定が資本金5億円以上の企業に義務付けられているが、システムの基本方針に「関係遮断」を盛り込んだ企業はわずか26%だった。
 警察庁は「企業は反社会的勢力との決別を宣言し、会社を挙げて暴力団や総会屋の不当要求に毅然と対応する体制を整えてほしい」としている。

 調査は昨年10月、全国の企業3000社を対象に実施、1441社(48%)が回答した。

 それによると、会社法の施行前に、行動指針などに反社会的勢力との関係遮断を規定していたのは61%、定めていなかったのは34%。〔共同〕(13:33)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070222STXKD081321022007.html
http://web.archive.org/web/20070224111519/http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20070222STXKD081321022007.html

この記事によると、会社法に基づき内部統制システムの基本方針を取締役会で決議した会社の26%すなわち4社に1社以上が、当該取締役会決議において「反社会的勢力との関係遮断」を盛り込んだことになる。しかし、公表されている各社の決議文を見る限り、そのような文言を明記したものは見たことがない。ほとんどの企業は、倫理規定やコンプライアンス委員会など、包括的な規定や組織に言及しているのみであり、個別具体的な事項は記述していない。「取締役会」で決議すべき「基本方針」としては、そのレベルで必要かつ十分なのであり、各論は、業務執行レベルで担保するのが常識的かつ実践的である。
そもそも、何故に「反社会的勢力との関係遮断」という個別の事項を「内部統制システムの基本方針」として決議しなければならないのか。そうであれば、事業活動に関わる全ての法令(刑法、労働法、独禁法..)を列記し、それらを遵守する旨の決議をしなければならないことになる。いくら重要なことであっても、一官庁の意向で特定の項目のみを明記することは、他とのバランスを欠くことにならないか。警察庁は、全国暴力追放運動推進センターの実施したアンケート結果を鵜呑みにするのではなく、法務省に問い合わせる等して、会社法の立法趣旨や運用実態をよく勉強してもらいたい。
この記事は、アンケートの結果は忠実に伝えているかもしれないが、企業における実際の対応状況を正確に表していない。日経新聞社も、警察庁の発表を鵜呑みにするのではなく、きちんと裏付けをとった上で、報道してもらいたい。以上。