帝人の内部統制決議

帝人は、4月24日付で、会社法に基づく内部統制システム構築の基本方針に関する取締役会決議の内容を発表した。

平成18年4月24日
各位
帝人株式会社
...
内部統制システム構築の基本方針に関する決議のお知らせ
 
当社は、平成18年3月30日開催の取締役会において、内部統制システム構築の基本方針に関し、5月1日の会社法施行に先立ち、下記のとおり決定いたしましたのでお知らせします。
(以下略)
東証適時開示情報閲覧サービス http://www.tse.or.jp/disclosure/index.html太字は引用者、以下同じ)

5月1日の会社法施行を待たず、取締役会決議を行い、さらに積極的に開示を行った姿勢は高く評価されるものと思われる。と同時に、決議内容を検討中の会社にとって極めて有益な情報提供となったことは想像に難くない、ということはさておき。(実は、先行事例として「関東電化工業」がある。3月22日付で発表済み。あまり話題にならなかったようだが..)

ところで、巷では会社法に基づく内部統制システムに係る決議について、5月の最初の取締役会で行うものとの認識が一般に広まっている。その根拠は、おそらく法務省葉玉氏のブログの記述などによるものと思われる。

12条から16条までが、商法の改正に伴う経過措置で、大事なのは、次の2つでしょうか。
...
14条 これは、以前、質問にもあったのですが、内部統制システムの決定をいつやらなければならないのか、という点に関するものです。以前、私が、施行後すみやかに決定すべきであるとお答えしましたが、それでは、ちょっとかわいそうなので、施行日以後最初に開催される取締役会において決定すれば足りることになりました。
(「会社法であそぼ。」http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50368492.html

「すみやかに」か「最初に開催される取締役会において」かの違いはあるものの、「施行後」という点では共通しており、「施行前」の決議については想定していないように読める。何が「かわいそう」なのかはさておき。
また、帝人の発表に関するマスコミ報道においても下記のような記述が見られる。

新会社法では、大会社(資本金五億円以上または負債二百億円以上)は同法の施行後の最初の取締役会で内部統制の構築を決議しなければならない
日本経済新聞 2006年4月25日付朝刊 http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20060424AT1D2300524042006.html

しかし、会社法経過措置政令は、単に

(取締役会の権限等に関する規定の適用除外)

第十四条 新株式会社については、会社法第三百六十二条第五項の規定は、施行日以後最初に開催される取締役会の終結の時までは、適用しない

と定めているのみであり、「施行日以後最初に開催される取締役会で決議せよ」とは言っていない。従って、会社法施行前の決議も有効と解されるところ、帝人はそれを実行したことになる。世間はこのことをどのように受け止めるか、というほどたいした問題ではないが、気になるところ。
ていうか、3月30日開催の取締役会で決議した内容を、4月24日まで1か月弱もの間、公表しなかったのはなぜだろうか?それこそたいした問題ではないが、かなり気になるところではある..以上。