報告をするための体制

会社法「株式会社の業務の適正を確保する体制に関する法務省令」(いわゆる内部統制省令)案第5条第3項3号について。

三 取締役及び使用人が監査役監査役会設置会社においては監査役会又は監査役。以下この号において同じ。)に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制

この「報告をするための体制」というのがよくわからない。会社法第357条で「取締役は、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を株主(監査役設置会社にあっては、監査役)に報告しなければならない」とある(cf.現行の商法第274条の2に同趣旨規定)。
取締役の監査役への報告「義務」はこれだけで、ほかは監査役の監査「権限」として取締役会に出席したり、取締役の職務執行状況等について報告を受けることができるが、上記法務省令案がいう「報告」というのは前者、後者のいずれ(または双方)を指しているのか。後者については監査役監査の方法・体制(往査をする/しない、監査対象範囲の決定等)は監査役の専権事項であるから、執行側に監査体制を決定する権限(責任)を持たせるのは適当でないような気もするので、前者(取締役の報告義務)のみを指しているのかもしれない。
あるいはそれ以外の任意の報告を想定しているのか。しかし、報告義務もないのに体制をつくる義務だけがあるのは変?
ていうか、そもそも報告するためにわざわざ体制を作らないといけないのか?という素朴な疑問なのだが..特に、取締役の報告義務は「株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したとき」に「直ちに」報告することが求められているので、体制云々よりもとにかく一刻も早く第一報を入れることに意味があるのではなかろうか。事後処理、原因分析、再発防止策などは「報告」とは別に、後日の取締役会などでじっくり検討すればよろしい。
まさか、取締役会の決議で「取締役および使用人は、監査役に報告をする際、口頭、文書または電磁的記録の提示のいずれかの方法により、これを行うものとする」なーんて書くわけにもいかないし..