内部統制報告制度に関するQ&Aの追加

出る出ると言われてなかなか出なかったQ&Aの追加分がようやく出た由。既出の20問に加えて47問が追加され、都合計67問となった。しかし、出せば出すほど混乱・混迷の度は深まるばかりのような気も..
そんな中、多少の期待を持って見たのが問45。以下に引用する。

(問45)【期末日後の重要な欠陥の是正措置】
決算・財務報告プロセスに係る内部統制のように、重要な欠陥を是正した内部統制について実際の運用状況の評価の実施時期が期末日以降であっても、当年度の財務諸表の適正性を担保する内部統制としては有効に機能する場合がある。このような場合、評価時点(期末日)における内部統制は有効であると判断してよいか。
(答)
1.実施基準では、経営者による内部統制評価は、期末日を評価時点として実施することとされているが、運用状況の評価の実施時期は、期末日後であっても問題はなく、評価時点(期末日)における内部統制の有効性を判断するために適切な時期に評価を実施すれば足りることとされている(実施基準II3(3)マル4ハ)。
2.したがって、重要な欠陥を是正した内部統制の実際の運用状況の評価の実施時期が期末日以降であっても、当年度の財務報告の信頼性を確保する内部統制として運用の有効性を確認できた場合には、評価時点(期末日)において内部統制は有効であると判断することができる。
(注)内部統制は組織内のすべての者が業務の中で遂行する一連の動的なプロセスであり、重要な欠陥があれば、その都度是正していくことが重要である。なお、重要な欠陥が発見された場合でも、期末日までに是正されていれば、財務報告に係る内部統制は有効であると認めることができる。また、期末日までに是正できなかった場合でも、期末日後に実施した是正措置や是正に向けての方針等を内部統制報告書に記載することができる(内部統制府令ガイドライン4-5)。
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080624-3/01.pdf

そもそも「運用状況の評価の実施時期が期末日以降」となる理由は何なのか。それは、例えば、期末日までに予定していた評価が完了しなかったという場合もあろう。しかし、より典型的には、内部統制の運用そのものが期末日以降に行われる場合、すなわち決算・財務報告作成プロセスが該当する。
決算・財務報告作成プロセスはその性格上、期末日以降に実施される。もちろんその内部統制の有効性評価は前年度の整備・運用結果やその是正状況の確認、四半期報告作成等のタイミングで適宜前倒しで行うことも可能である。しかし何と言っても「本番」は期末日後である。そこで様々な統制活動が行われ、財務報告の精度が高まっていくのである。
一部には、期末日後に財務報告の誤りが発見された場合、直ちに内部統制の不備となるといった「誤解」もあるやに聞く。しかし、その期末日以降に実施される決算・財務報告作成プロセスにおいて財務報告の草案に誤りが発見され、訂正されたとしても、それ自体は内部統制の不備ではなく、内部統制が有効に機能した結果と見るべきである。
このように考えうるならば、問45は、「実際の運用状況の評価の実施時期が期末日以降であっても」ではなく、「実際の運用の実施時期が期末日以降であっても」とすべきであり、またそのように記載しても何ら差し支えないはずである。
「評価」の時期が期末日前か後かはどうでもよい。重要なのは「運用」の時期のほうである。
運用の時期が期末日後である場合に、その内部統制の有効性の評価はいつどのように行うべきか。
企業の実務担当者が知りたいのは、このようなことであるにも関わらず、実施基準の言い換えに終始し、肝心なことを開示しようとしない金融庁。これが「プリンシプルベースでの規制」だというのなら笑止。せっかくQ&Aをつくるのなら、11もの「誤解」を解くというのなら、もっとはっきりさせたらどうか。
いっそ、実施基準を改定して、「評価時点(期末日)」などといった無理な概念*1を廃止し、有価証券報告書の提出日までに是正された重要な欠陥は開示しなくてもよい、とすれば一番すっきりするのだが..

*1:なぜなら期末日時点では、当該年度における財務報告に係る内部統制の運用が完了していないから