実施基準案(公開草案)に対するコメント

2007/1/31に開かれた金融庁企業会計審議会内部統制部会の資料として、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準 (公開草案)」に対するパブリックコメントの概要が公表された。190にものぼったともいわれる同庁に寄せられた意見書に対する見解やいかに?
中身を興味津々で覗いてみると..

実施基準案(公開草案)に対するコメントの概要
◎ 全般的なコメント
・ 米国SOX法の鵜呑みを排し、我が国の特質を十分踏まえた、懇切丁寧な草案を提示した点を特に評価したい
(以下略)

はあ?現在、日本中に混乱を撒き散らしているこの基準案のどこを読めば「懇切丁寧」などといえるのか?190の意見書の中で多数の意見であればともかく、少なくとも、日本公認会計士協会、日本監査役協会、日本内部監査協会など名だたる団体が公表した意見書の本文をCtrl+Fキーで検索したが、「懇切丁寧」なる文言は一切でてこない。金融庁のお膝元?である全国銀行協会の意見書でさえ、そんな露骨なヨイショ言葉は使っていない。一体「懇切丁寧」という意見を出したのは、何処の、誰なのか?

これらの意見書を読むと、むしろ、もっと明確な基準を示すべきとの指摘が圧倒的に多い。しかし、今回公表された資料では、「対応が困難又は対応の必要はないと考えられるもの」としてこんなことを言っている。

・本制度が定着するまでの当面の間においては、基準・実施基準の解釈等について、Q&A等を作成する必要があるのではないか。
[→ Q&A等の作成については、その作成の要否を含め、行政において適切に判断されるべきもの。]

行政において適切に判断されるべきもの」とは良くぞ言った。金融庁は、行政機関ではないと言っているのか?
さらに別添資料として、その他のコメントに対する「考え方」が示されている。

No. コメントの概要 コメントに対する考え方
5 重要な事業拠点の選定につき、「売上高等の重要性により決定する」とあるが、「売上高」の「」には何が含まれるのか 企業の特性に応じて適切な指標がある場合には、売上高に代えて、又は売上高と組み合わせて用いることが考えられる。

」の意味を質問しているのに、それには答えず、「企業」「特性」と「」を乱発している。ひどい回答である。「企業」の「」、「特性」の「」には何が含まれるのか?

No. コメントの概要 コメントに対する考え方
6 評価範囲について、経営者と監査人とで意見が異なった場合には、どのようになるか。 意見が異なった場合、再度協議を行うことが考えられるが、最終的には、経営者・監査人の双方が、自己の責任において評価・監査結果を報告書に示すことになる。

現在、企業、監査法人の双方が一番困っている問題である。これに対して「双方が、自己の責任で」とは何と言う無責任な言い草だろう。そもそも基準自体が明確であれば対立する余地はほとんどない。もし、経営者が「有効」(または「不備」)と評価し、監査人が「不備」(または「有効」)と判断したらそのままではすまされないであろう。対立は双方のためにならない。対立を避けるための調整負荷は膨大なものである。結局、評価範囲にしても、判定基準にしても、安全サイドに(=過剰に)対応しておいたほうがお互い無難、という方向に動くことは容易に想像できる。そうなれば、まさに米SOX法の二の舞である。開いた口がふさがらなくて、閉口するばかりである。以上。