企業会計審議会内部統制部会の報告書の取りまとめについて

またまた、金融庁から文書が発表されました。

これは、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(公開草案)」を、パブリックコメントを踏まえて加筆修正したものですが、タイトルがなんと

「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について」

ということで、もともと「評価及び監査の基準」だったものが「基準のあり方」に後退しています。具体的な基準は「実施基準」で、という趣旨かもしれませんが、それじゃあ今までの議論は何だったのか?との疑問が残るところです。

で、中身ですが、まずは内部統制の定義関係から。

○ 業務の有効性及び効率性とは、事業活動の目的の達成のため、業務の有効性及び効率性を高めることをいう。
○ 財務報告の信頼性とは、財務諸表及び財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報の信頼性を確保することをいう。
○ 事業活動に関わる法令等の遵守とは、事業活動に関わる法令その他の規範の遵守を促進することをいう。
○ 資産の保全とは、資産の取得、使用及び処分が正当な手続及び承認の下に行われるよう、資産の保全を図ることをいう。
(注)内部統制の目的はそれぞれに独立しているが、相互に関連している。

「○○とは〜○○することをいう」という同義反復のオンパレードになっています。まるで、傷のついたレコードのようです。無理に説明を加えようとして、自家撞着のドツボにはまっているとしか見えません。

この報告書に関して、今日の日経新聞が記事を書いています。

経営者と会計士が二重チェック・内部統制強化で会計審
 金融庁企業会計審議会は8日、上場企業の内部統制強化に向けた新ルールをまとめた。経営トップが財務諸表の作成手続きを自ら点検・評価し、これを公認会計士が監査する二重チェック体制が柱。経営者には決算が正確であるという宣誓も義務づける。カネボウによる粉飾決算のような不正会計を防ぎ、経営の透明度を高める。早ければ2007年度から新ルールを始める。(以下略)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20051209AT1F0801G08122005.html

「二重チェック」というと聞こえはいいですが..要するに「インダイレクト・アプローチ」を誤解したものと思われます。会計士は、直接内部統制を監査するのではなく、経営者の評価結果を間接的に監査するという意味であり、二重チェックとはほど遠いものです。ヘタをすれば、形式的な監査に終始し、耐震強度偽装を見抜けなかった建築確認審査の二の舞になりかねません。