会社法と金融商品取引法の交錯と今後の課題[上]

商事法務No.1821(2008.1.5)に掲載された表題の座談会記事における某大手商社フィナンシャル業務部長の発言より。

鶯地 金融商品取引法の財務報告に係る内部統制関連規定の施行を今年四月に控えて、各企業は今まさに準備に追われています。..この法律には、本質的にかなり困難な部分があるのではないかと感じています。
..内部統制の有効性を証明するということは、実際には不可能に近いような作業なのかもしれません。..例えれば財務諸表監査が「この人がいったことは嘘ではない」ということを証明する作業とするならば、内部統制監査は、「この人は嘘をつきません」ということを証明することですので、..いくらやっても切りがない面があるのです。
..結果として、膨大な書類が積みあがっている状態になっています。これは、アメリカのSOX法で起こったことでもあるのですが、日本でその教訓が生かされているかといえば、必ずしもそうではないかもしれないと思います。
(出典:商事法務No.1821(2008.1.5)P9)

金融商品取引法に基づく内部統制報告制度には実行不可能な要素が存在する点が的確に指摘されている。また、柔らかい表現ながらアメリカのSOX法の教訓が生かされていないという指摘も、完全に同意できる内容となっている。
続いて、会社法金融商品取引法で「ねじれ」が生じている監査役と会計監査人・公認会計士との関係についての学者、弁護士を交えたやりとりより。

神田 ..会計監査人の監査の方法と結果の相当性を判断した監査役による監査報告書が公表された後に、この相当性を監査人が判断するという「監査のねじれ」が生じており、また監査役が統制環境の一部に含まれ、これを監査人が監査するという相互監視の視点が盛られており、他国にはみられない悩ましい問題があると聞いたのですが..
鶯地 実施基準の中で全社統制のチェック項目例示として、「監査役は機能しているか」という項目が入っていますので、六月に何が起こるかというと、公認会計士が「監査役が機能しているかどうかを私はみる責任がありますから、監査役がどんなことをしているか教えてください」というかもしれません。一方で経営者は「いやいや、そんなことを統制する義務はない」というような会話があるかもしれません。..会計監査人が「監査役の行った会計監査は十分でない」ということを統制環境の不備として指摘することはあり得ると思うのです..
神田 考えすぎるとそうなるので、あまり考えないほうがいいですね。
武井 この点の両法の調整は、考えすぎてはいけないということでしょうか。
神田 そうです。
(出典:同上 P21〜22)

 
考えすぎてはいけない..orz