米型「内部統制」は効果疑問(2007.1.26産経新聞)

2007.1.26付の産経新聞に、神戸大学教授・加護野忠男氏による内部統制に関する論稿が掲載された。この記事は同新聞社のWebサイトで公開されている。加護野教授によると、米国流の内部統制は、コストがかかりすぎる上、日本企業の強みを阻害するなど4つの点で問題があるとした上で、次のように断罪している。

米型「内部統制」は効果疑問
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..内部統制システムを導入すると、良い経営が行えなくなる。それにもかかわらず、硬直的なシステムの導入が義務付けられるのは、投資家の信頼回復、投資家保護という大義名分のためである。

投資家にとって大切なのは、企業で良い経営が行われて、企業価値が上昇することである。にもかかわらず、投資家保護がこの本来の目的から外れてしまうのは、規制当局の論理が優先されてしまうからである。
規制当局には、投資家にとって望ましくないことを避けさせようとする姿勢がある。そのようなことが起こったときに規制当局者の責任が問われるからである。規制当局には、投資家にとって良いことを実現させるという任務はないのである。そのために、不祥事が起こるたびに企業に課せられるルールが厳しくなっていく。

最近の日興コーディアルの利益粉飾事件のように投資家をだまそうとする企業経営者は後を絶たない。確かにそのとおりなのだが、このような経営者は全体から見ればごくわずかである。にもかかわらず、このような例外的経営者を想定したルールがつくられ、健全な企業の経営の邪魔をしてしまう。内部統制のシステムはまさにそれである。

硬直的な統制制度が導入されれば、日本企業の将来が心配だ。不祥事は防げるが、企業の競争力も低下するだろう。上手な規制をしないと、株価は上がらない。下手な投資家保護は投資家の利益にはならない。
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/seiron/070126/srn070126000.htm

加護野教授の心配は、至極もっともである。否、すでに現実のものとなりつつある。但し、問題の本質は、硬直的なルールにあるのではなく、むしろ曖昧なルール(実施基準)が、経営者、監査法人、ITベンダなど利害関係者に勝手に解釈されて暴走してしまうのではないかということである。このままでは、米国の二の舞、いやそれ以上の混乱、弊害をもたらす可能性がある。規制当局者は、自らの責任が問われる前に、早急に手を打つべきである。以上。