「裁判員制度の正体」

デキの悪い、スジの悪い制度の問題点を徹底的におちょくる論旨が痛快。本質的な問題を考察することなく、カタチの議論を優先させてつくった制度は、失敗していくのが世の常である。*1
裁判員になりたい人も、なりたくない人も、まだわからない人も、とにかく一読すべし。
推進論者は、ぜひ本書に反論し、公平な議論をたたかわせてほしい。ゆるキャラを粗製濫造して、遊んでいる場合ではない。
しかし、本書の著者が主張するように裁判のことはプロである裁判官に任せておけばよい、というわけではない。司法への監視を強化する必要はあるだろう。これこそ主権者たる国民の責務なのではないか。
そのためには、国民への情報公開が一番簡単かつ有効と考える。日本国憲法第八十二条は「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」*2ことを原則としている。被害者や証人などの人権に最大限配慮することは当然だが、例えば、国会ではすでに実施されているように、審議状況の動画や議事録をインターネットで公開してはどうか。マスメディアのバイアスを排除することが肝要であることは言うまでもない。

*1:裁判員制度に比べれば、J−SOX(金融商品取引法に基づく内部統制報告制度)や個人情報保護法などはまだ害が少ないというべきか。

*2:五七五七七