「要約 世界文学全集」

古今東西の名作計62編を、たった2冊の文庫本に要約。定価で買っても1編あたり税込み21円ちょいだが、これをブックオフもどきの古本屋で2冊210円で購入したので、1編あたり3.4円に満たない。
要約といっても、ストーリーのサマリーではなく、原作(翻訳)の美味しいところを抜粋引用した内容となっているので、原作のテイストを残しつつ、独立した作品として読んでも、全く違和感はない。
約20年もの歳月を費やして完成した全7部構成の大作「チボー家の人々」(マルタン・デュ・ガール)も、わずか10ページほどにまとめられている。「O・ヘンリ短編集」などは、本来要約の必要性が乏しいと思われるが、4つの作品が1作あたり3〜5ページ程度に見事に要約されている。編者の補足解説部分で、有名な「最後の一葉」を「壁に描かれた一枚の葉が病人の命を救う」、とか「賢者の贈りもの」を「貧乏な若い夫婦がたがいに真心のこもったクリスマスプレゼントをする」など、ワンセンテンスに超要約されているのが、何もそこまでして要約せんでもと笑える。清水義範の「百字の男」を思わせる*1
作品のプロットやストーリーを圧縮して読むことで、新たな発見もある。例えば、「グレート・ギャツビー(邦題「華麗なるギャツビー」)」(フィッツジェラルド)、「戦争と平和」(トルストイ*2)、「若きウェルテルの悩み」(ゲーテ)の共通点は、三角関係による恋愛物語である。

要約世界文学全集1 (新潮文庫)

要約世界文学全集1 (新潮文庫)

要約世界文学全集2 (新潮文庫)

要約世界文学全集2 (新潮文庫)

本なんかたくさんだ、理屈も言葉ももううんざりだ、おれはこれで生きることができるのだろうか・・・・・・。
「生きるんだ」と彼はつぶやく。「行動するんだ、そして・・・・・・愛するんだ」

(「チボー家の人々」(白水社刊 山内義雄訳より)

*1:究極の要約は、「国語入試問題必勝法」の「いろいろあった」か?

*2:その生涯は、編者により「若いころは放蕩の限りを尽し、中年になると幸福な家庭生活にめぐまれてライフワークを仕上げ、並ぶものなき名声を博し、晩年には一転して聖人になろうとした人間」と要約されている