「博士の愛した数式」

今さらながらではあるが、「博士の愛した数式」を初めて読んで感動した。
こんなに美しい文章は、今まで見たことがない。
散文として曖昧なところは一切ないのに、どの一節を抜き出しても一篇の詩として、成立している。

各々三人に役目があること。お互いの息遣いがすぐそばに感じられ、ささやかな仕事が少しずつ達成されてゆくのを目の当たりにできることは、私たちに思いがけない喜びをもたらした。オーブンの中で焼ける肉の匂い、雑巾からしたたり落ちる水滴、アイロンから立ち上る蒸気、それらが一つに溶け合い、私たちを包んでいた。

単行本で1,575円、文庫版で460円のところ、ブックオフで当初250円がさらに値下げされ、最安値の105円で購入(いずれも税込み)。待ったかいがあったとも言えるが、1,575円以上の価値は十分あり。