出張に行くと、職場や家族に土産を買って帰るのが、日本では一般的な慣行になっている。今回の土産は、職場用には姫路土産では定番の伊勢屋本店の餡餅「玉椿」、家族用には明石の名店藤江屋分大の漉餡大福「分大餅(ぶんだいもち)」にした。できれば両方とも分大餅にしたかったが、日保ちがしない(賞味期限:当日限り)ため、無難な選択としてはやはり定番モノになってしまう。
こういうお土産用の和菓子には、何らかの由来が書かれたありがたい説明書きが添付されていることが多い。
姫路名産
玉椿の由来
伊勢屋本店の由来は極めて古く、菓舗としての開業は元禄年間といわれている。天保の頃、姫路藩家老 河合寸翁の御推薦を賜り江戸に行き、(中略)数種の菓子を考案した。帰藩の後、寸翁公がその内の一種を殊の外お気に召され玉椿と命名され、以後藩の御用菓子として用命せられた。(中略)その高尚優雅な風味は今日に至るまで江湖の絶讃を博しております。
舌にして
姫路をおもふ玉椿 方堂
一方、「分大餅」には、そのような由来の代わり?に、分大餅を礼賛する詩が添えられている。
分大餅 礼賛
竹中 郁
朝には 白
昼には 青
晩には 赤
こうして「分大餅」をたべたいが
夏のあいだ製造がおやすみだ
その代わりに「うすぐも」がある
三百六十五日やすみなく
まあ 「分大餅」と「うすぐも」とを
たべているのがわたくしだ
「うすぐも」というのは、同じ藤江屋分大の薄皮饅頭の名前である。「分大餅」を礼賛するあまり、「うすぐも」を代替品のように言うのは如何なものか。ということはさておき、この詩人は私の高校の先輩にあたるということもさておき。三百六十五日やすみなくということは、夏の間を除いて、賞味期限が当日限りである分大餅を、毎日毎日3個ずつ、買っていたのだろうか。
ちなみに私が分大餅を購入したのは、神戸そごうB1F食品売場の一角にあるこじんまりとした支店。店員さんに、念のため「これはこしあんですか」と訊いたところ「すみません、こしあんしかないんです」との礼儀正しい回答。いや、そのこしあんの大福餅を探し求めて三千里の旅をしてきたのですよ、私は。
餡は究極のなめらかさ、餅は小ぶりながらしっかりとした食感が楽しめる。
ちなみに私が購入した分大餅は、全て白ばかり10個を箱詰めしてもらったもの。帰りの新幹線の車内で2個食べ、帰宅後家族が食べ、残り2個となった。賞味期限切れを心配する必要は、全くない。