各公的団体からの「高度IT人材の育成をめざして(案)」に対するパブリックコメント

各公的団体から「高度IT人材の育成をめざして(案)」に対するパブリックコメントが、ぼちぼち公開されてきている。個人的に興味を引かれた部分を引用しつつ、紹介する。

経営情報学会
http://www.jasmin.jp/
情報システムにおける上流工程は、いわばITを利用していかに効果的に業務を遂行するしくみをつくるかという視点が重要であり、その意味では、いわゆるソフトウェア開発というよりは、業務設計が中心となる工程と考えてよい。したがって、この部分を遂行する人材は、ITを利用するユーザ側を中心として育成する必要がある
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さらに、「基本戦略系」人材と「高度ソリューション系」人材との間の、利害相反を調整するコーディネータも必要であると考える。
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報告書案のp.2で指摘しているような、「企業のビジネス活動全体を構造化(モデル化)する能力、あるいは企業内の各種プロセスについての専門知識とIT知識の融合化」をもつ人材については、IT産業サイドより、ユーザ産業サイドで圧倒的に求められていることを強調すべきである。たとえ同じ能力をもった人材であっても、ユーザ側とIT産業側では同じだけの成果を上げられるとは限らない。そのため、「基本戦略系」と呼ぶ人材については、あくまでも育成のターゲットをユーザ企業側におき、スキル標準の決定、教育カリキュラムの策定、試験制度の改定を行うべきである。

ユーザ企業の視点を中心に、大変力強い主張で、共感できる部分が多い内容である。

(社)情報処理学会
http://www.ipsj.or.jp/03somu/teigen/meti070521.html
人材企業競争力の向上と高度IT 人材活用の面から,最も影響力を持つ経営層におけるIT の理解不足を解消することが,短期的にも,かつ,実効的にも効果を期待できる.また,キャリアパスとして,IT の専門家が企業経営の意思決定に参画できることが望ましい.
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特に,IT を専門としないユーザ企業における戦略的意思決定や組込み分野などの非IT 産業におけるIT の活用などでは,経営層にIT 人材が不足しています.高度なスタッフ的人材として「ストラテジスト」が示されていますが,経営層でIT の諸課題や人材活用に的確な意思決定が欠けると,現場の高度なIT 人材を活かせない恐れがあります.

確かに「経営層におけるIT の理解不足を解消」できればかなりの問題は解決できるのだが、実際に「短期的」かつ「実効的」に効果を期待できる程度の実現を期待できるかどうかは..^^);

(社)コンピュータソフトウェア協会
http://www.csaj.jp/theme/release.html
ユーザ側とIT技術者側の仲介を行える人材育成も検討するべきである。ITコーディネータにその役割があると考えるが、現在形骸化されている感が強い。今回シスアドの試験制度が改組されると、今までの初級シスアド資格者が、今後の目標を見失う危険性も懸念されるため、例えば初級シスアド試験を発展解消するのではなく、UISSのレベル2試験として位置づけることなどが考えれる。

「ユーザ側とIT技術者側の仲介を行える人材」や初級シスアド試験の位置付けなど、全く同感である。

(社)情報サービス産業協会
http://www.jisa.or.jp/opnion/index_h19-j.html
24 頁3 行目に「以下の基本構成により、2008 年度秋期試験から実施することを目標とする。」との記述があるが、基本構成にある全ての試験についてカリキュラムや試験方法を整備し、同時期に実施するには準備不足と考える。また、特に情報処理技術者試験合格を目指して準備を行っている受験者や教育機関の混乱を招かぬよう、十分な周知を行うことも必要である。

来年の秋試験からの実施は、やはり無理があると思う。以上。