各紙社説に見る番組捏造事件

あるある大辞典の番組捏造事件について、新聞各紙の社説の論評を比較してみる。まずは本事件の当事者グループ?の産経新聞から。

【主張】番組捏造 問われるメディアの基本
 関西テレビが制作し、フジテレビ系で放送された「発掘!あるある大事典II」で、納豆のダイエット効果を声高に訴えながら、実際には存在しない実験結果や事実と異なる内容に基づく番組作りをしていたことが明らかになった。

 メディアとして絶対にあってはならない話である。

 関テレは、社長が謝罪会見して番組の打ち切りも含めた厳しい対応を約束し、総務省放送法に抵触する可能性があるとして調査に乗り出した。

 これでは報道機関としての看板をおろした方がよいのではないか。番組でのデータ捏造(ねつぞう)や「やらせ」が後を絶たない事態に、そんな思いをテレビ局に抱く視聴者は少なくないだろう。テレビ界全体の信頼性にかかわる問題だ。徹底解明を望みたい。

 こうした不祥事は他局でも相次いでいる。昨年もTBS系列の番組で白インゲンにダイエット効果があると放送され、これを信じた視聴者が下痢や嘔吐(おうと)で入院する騒ぎが起きている。

 過去にさかのぼれば、視聴率を実態より上げる目的で調査家庭に金品を渡していた例や、杜撰(ずさん)な取材により特定の農作物に風評被害を招いたケースなど、メディアとしての信頼を揺るがした事例は枚挙にいとまがない。http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070123/shc070123000.htm

関テレの問題を他人事のように書く姿勢もさりながら、他局を名指しして過去の古傷を書きたてることで、テレビ界全体の問題として論点をすりかえようとしているのにはあきれる。名指しはしていないが、後の2例は日テレとテレ朝の事件である。一方、名指しされたTBS陣営の毎日新聞

社説:ねつ造番組 報道機関を名乗る資格がない
・・・・
 テレビ番組をめぐっては、やらせや視聴率操作などの問題がこれまでも続いたが、ねつ造が引き起こした社会的な影響の大きさという意味から、今回の番組は特に悪質だ。新聞でいうなら社長が辞任に追い込まれた朝日新聞の「サンゴ事件」に匹敵する。
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070123k0000m070155000c.html

朝日新聞のかなり以前の事件を引き合いに出して、社長の辞任まで示唆している。が、白インゲン事件はあっさりスルーしている。では、古傷を挙げられた朝日新聞

捏造番組 視聴者を欺く罪深さ
・・・・
 03年に日本テレビで視聴率の調査家庭に金品を渡す事件が起き、放送界は視聴率偏重の危うさを思い知ったはずだ。しかし、いま多くの局が健康ブームにつけこむような番組で視聴率を狙っている。

 昨年、TBS系の番組で紹介された白インゲン豆を使ったダイエットで、多くの人が下痢や嘔吐(おうと)を訴えて入院する騒ぎがあった。不正確な情報は害にもなる。その教訓は生かされなかった。
http://www.asahi.com/paper/editorial20070122.html

今度は日テレとTBSの事件を持ち出し、サンゴ事件にはふれていない(日テレとTBSの事件の発生年をわざわざ書いてあるのは最近の事例であることを強調するためか)。最後に、読売新聞は今のところ本事件を社説では論じていない。

結局のところ、自分にとって都合の悪いことはタナにあげて、責任をうやむやにしようとする大手マスコミの体質こそ、この種の事件が後をたたない根本的な原因ではないのか。以上。