衆議院/財務金融委員会 議事録

衆議院のサイトで、証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)(金融商品取引法日本版SOX法)をめぐる審議の議事録が公開されているのを発見。内部統制に関する質疑を中心に抜粋してみた。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516420060421012.htm#p_honbun
第12号
平成十八年四月二十一日(金曜日)
    午前九時一分開議
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○土井(真)委員 それでは次に、こういう投資商品については、これからディスクローズ、内容の開示というのが非常に重要になってくるかというふうに思います。金融商品だけでなくて、今現在においても有価証券報告書等でいろいろ会社の内容というのはディスクローズされているわけなんですけれども、これから、今改正の法律では、今までなかった部分で、特に財務諸表、財務報告に関する内部統制の強化ということで、有価証券報告書等の適正性について経営者の確認を義務づけることとしております。

 経営者の確認を義務づけるというこの経営者というのは具体的にはどういう方になるのか、それを教えていただけますでしょうか。

○三國谷政府参考人 経営者の確認の義務づけでございますが、この確認書の様式あるいは記載事項につきましてはこれから内閣府令で定めることになるわけでございますけれども、確認書では、現在のところ、有価証券報告書等を提出する会社の代表者、それから最高財務責任者を置いている場合には最高財務責任者の署名、これを求めることを検討しているところでございます。
○土井(真)委員 それは両名あわせてということでしょうか。

○三國谷政府参考人 御指摘のとおりでございます。

会社の代表者と最高財務責任者(CFO)の連名になるという話は、正式にはまだ出ていないようであるが、わざわざ連名を求めるのはあまり意味がないような気もする。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516420060425013.htm#p_honbun
第13号
平成十八年四月二十五日(火曜日)

    午前九時一分開議
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○鷲尾委員 それでは、続きまして、経営者等による確認書の提出というのが義務化されております。現在、これについては、義務化はされているけれども罰則はないという規定になってございます。

 この経営者等による確認書というのは、いわゆる決算数値に対して、しっかりと監査法人に対して資料を提出しただとか、決算数値をつくり出すために経営者側がうそをついていないよということの証明の書類になると思うんですが、これを例えば提出しましたよ、提出するのはいいんですけれども、これに例えばうそがあった場合、これは大変な問題だと思うんですが、実際、こういう提出したペーパーにうそがあった場合についての罰則規定というのはつくるおつもりはないんですか。

○与謝野国務大臣 御指摘の確認書は、有価証券報告書等の記載内容が適正である旨を経営者が確認し、その旨を記載して当該有価証券報告書等とあわせて提出するものでございます。

 有価証券報告書等に虚偽記載があることを知りつつ、その記載内容が適正である旨を記載した確認書を提出した場合について罰則を科することとすると、虚偽記載のある有価証券報告書等を提出した場合の罰則と構成要件が基本的に重なることになります。

 このため、二重処罰防止の観点から、虚偽記載のある確認書を提出した場合の罰則は虚偽有価証券報告書を提出した場合の罰則で担保することとし、虚偽記載のある確認書の提出に係る罰則規定は設けないこととしたものでございます。
○鷲尾委員 この経営者等による確認書ですけれども、取引所の方の自主規制において経営者の宣誓書というものがございます。この点、取引所の規制と重複するものなのか、これは概念的に一致してくるものなのかどうか。将来的には、恐らく、会社側からすれば当然事務負担もあるだろうということで、制度的に一致する、要するに収れんしていくというおつもりがあるのかどうかというところまで御見解を伺えたらと思います。
○与謝野国務大臣 取引所の自主規制においては、上場会社に対し、まず第一には、有価証券報告書等に不実の記載がないことを認識していること等を記載した書面、すなわち有価証券報告書等の適正性に関する確認書や、第二には、会社情報の投資者への適時適切な提供等について真摯な姿勢で臨む旨を宣誓する、適時開示に関する宣誓書、これらの提出を求めているところでございます。

 このうち、前者の有価証券報告書等の適正性に関する確認書については、今般導入する確認書制度と類似したものであることから、取引所における制度を引き続き維持していく必要があるかについて、取引所において判断されることになるものと考えております。

○鷲尾委員 ありがとうございました。

 続きまして、内部統制の評価報告書制度についてお伺いしようと思っております。

 内部統制自体の、これをつくる、組織を整備する責任は当然経営者にあるということだとは思うんですが、要するに、今回の法改正で、経営者側がつくった内部統制がしっかりしていますよというペーパーを公認会計士がチェックするという制度を導入するということなんですが、この経営者側の主張というところで、どういうものを想定されているのか。例えば、内部統制といったって、一年間ずっと有効になっているかどうかというところを確かめるのか、それとも、ある一定の時点これは有効であるということを確かめるのか。そこら辺の制度設計についてお伺いしたいのです。

○櫻田副大臣 ディスクロージャーをめぐる最近の不適切な事例については、内部統制が有効に機能していなかったのではないかとの指摘がなされておるところであります。財務報告に係る内部統制の強化を図ることが重要と考えております。こうした観点から、本法案の中で、内部統制報告制度を設けることにしたところでございます。

 当該制度のあり方等につきましては、企業会計審議会内部統制部会において検討を行っていただいているところであります。昨年十二月に取りまとめられました基準のあり方に関する部会報告においては、経営者がみずから財務報告に係る内部統制の有効性を評価することとされており、公認会計士には、その評価結果を検証することが求められております。

○鷲尾委員 その評価結果の検証がどういうことを検証するのかという御質問だったのでございますが。
 財務報告に係る内部統制について、要するに、先ほども申し上げましたけれども、一年間の有効性を評価するのか、例えば、一時点の有効性を評価するのか。先ほど、財務報告の部分とおっしゃっていましたけれども、その部分だけでいいのかとか、実際に経営者の主張されるペーパーがどういう内容になっているのかというところをお聞きしたかったんですけれども。

○三國谷政府参考人 内部統制でございますけれども、現在、そのあり方等につきまして、また、企業会計審議会の内部統制部会等におきましても、いろいろな検討を行っておるところでございます。

 昨年の十二月に取りまとめられました基準のあり方に関する部会報告におきましては、監査人の意見は、期末日における経営者による財務報告に係る内部統制の有効性の評価について表明するものとされているところでございます。この意味では時点評価が求められているものと考えておりますけれども、こういった時点評価につきましては、その有効性については、一定期間そういった統制が継続されることが一般的であると考えられるものでございまして、このような制度を導入することによりまして、内部統制の有効な確立が図られるものと考えているところでございます。

 その次に、御指摘がありました評価の問題でございますけれども、経営者のサイドといたしましては、この内部統制の有効性といたしまして、現在有効である、または重要な欠陥がある、あるいは不備であるという三類型を想定しているところでございます。これに対します監査人の評価といたしましては、これは一般的な話でございますが、無限定適正意見、それから限定つき適正意見、不適正、こういった形での評価が行われることになるのではないかと思っておりますが、なお詳細については、それぞれの部会等において検討している段階でございます。

○鷲尾委員 この内部統制評価報告書制度、今答弁ございましたとおり、時点検証だけれども一定期間の有効性の評価は必要であると。その有効性の評価については三類型で、監査人側としても、それに対して無限定、限定、そうじゃない場合ということで、これは言ってみれば非常に手間がかかることだと思うんですね。

 近ごろ、アメリカのグリーンスパンさん、前FRB議長ですけれども、サーベンス・オクスレー法企業改革法ですね、アメリカがいわゆるエンロン事件の後で、内部報告書制度をしっかり取り入れてやろう、そういった制度ですけれども、導入したアメリカの方が、国際競争力の観点からこの制度設計をちょっと変えていかなきゃいけないというふうなことを、実はこのSOX法を推進したグリーンスパンさん自身が言っておるわけでございます。

 実際、企業の負担、そして監査法人側の負担というのは、これは相当重くなると思うんですけれども、この制度設計について、国際競争力という観点から金融庁さんの方で、先ごろ導入されたアメリカの事情があるのですから、そこら辺の検討はされているんでしょうか。

○三國谷政府参考人 御指摘のとおり、内部統制につきましては、一方でコストの問題等につきましてもいろいろな御指摘があるところでございますが、一方で、財務報告の適正性を担保するために、その適正なあり方につきましてもあわせて考慮していかなければならないところでございます。

 現在、我が国におきましては、この有効性に関する経営者の評価と公認会計士の監査を実務に適応していくための評価や監査の基準等につきまして、今、企業会計審議会等におきまして検討を行っているところでございます。

 なお、昨年十二月に取りまとめられました基準のあり方に関する部会報告におきましては、経営者の評価と公認会計士の監査が相まって企業の財務報告に係る内部統制が強化されるよう有効な仕組みを構築していくこととすべきであるとされる一方で、評価、監査にかかります過大なコストは、投資家の収益の低下にもつながるものであるとの考え方も示されておりまして、先行して制度が導入されましたアメリカの議論等も踏まえまして、制度の有効性を損なわない前提のもとで、可能な限りの制度の合理化が提案されているところでございます。

 やや技術的な話になりますけれども、その中では、例えば、トップダウン型のリスクアプローチでございますとか、内部統制の不備につきまして、アメリカでは三つになっておりますところを二つにするとか、あるいは、ダイレクトレポーティングの不採用、それから、内部統制監査と財務諸表監査の一体的実施、あるいは、内部統制監査報告書と財務諸表監査報告書の一体的作成、監査人と監査役及び内部監査人との連携といった、いろいろなそういった工夫も今検討している段階でございます。

○鷲尾委員 ぜひアメリカの事例も見ていただきたいんですが、アメリカの方の実務でいいますと、実際私が見たわけじゃないです、聞きかじりの話なんですが、アメリカの内部管理組織の末端の一事務員の皆さんというのは、経理知識がある程度備わっているというよりも、むしろ余りなくて、会社のマニュアルを見ながら例えば一枚一枚の伝票処理をしていくというようなところで、監査法人が管理体制の整備というのに若干関与しながらアメリカの方では実務を行っているという話を聞き及んでいます。

 翻って日本では、もう当然、上場企業となりますと、一事務員さんが会計士さんと同等程度、もしくはそれ以上の会計知識を持ちながら、リーダーシップを持って内部管理組織を構築しているという現実があるわけで、そういう組織のあり方も含めて、アメリカの制度を導入したから日本でもいいんだというような制度の導入の仕方は、これからもう慎んでいただきたいというふうに思っております。

「虚偽記載のある確認書を提出した場合の罰則は虚偽有価証券報告書を提出した場合の罰則で担保」とあるが、以前指摘したように金融商品取引法では、確認書は四半期単位、内部統制報告書は年度単位で提出することになっている。すなわち年4回の確認書のうち3回分は内部統制評価(報告書)を伴わないことになるが、内部統制の評価を行わずに、具体的にはどのように財務報告の適正性を確認することになるのであろうか。
「虚偽記載のある確認書を提出した場合の罰則は虚偽有価証券報告書を提出した場合の罰則で担保」する根拠が「虚偽記載のある有価証券報告書等を提出した場合の罰則と構成要件が基本的に重なる」ということなのであれば、確認書そのものが、そもそも、せいぜい、有価証券報告書の「表紙」程度の意味しかないのではないだろうか?つまりは、中身がウソであるがゆえに(中身にウソは書いていないと書いてある)表紙もウソであるというだけのことで。
この点、米国SOX法では「確認書」ではなく「宣誓書」といっており、このほうがすっきりする。なぜなら、「確認書」となると「では、どうやって確認したのか?」というプロセスが問われなければならないからである。しかし、金融商品取引法では、その確認プロセスは年に1回しか実施されないのである。プロセスを実施しないで「確認書」のみを提出せよというのは、無理難題である。
金融商品取引法の施行後は、証券取引所に提出する確認書は当然廃止されるものと思っていたが、まだ決まっていない模様。
米国企業では、末端の事務員が会社のマニュアルを見ながら一枚一枚の伝票処理をしている、というのは本当なのだろうか?

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516420060509015.htm#p_honbun
第15号
平成十八年五月九日(火曜日)

    午前九時開議

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○広津委員 どうもありがとうございます。かなり充実した準備が進んでいると思います。よろしくお願いいたします。

 次に、内部統制報告制度について御質問いたします。

 証券取引法等の一部を改正する法律案では、有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、金融商品取引所上場会社は、事業年度ごとに、内部統制報告書を有価証券報告書とあわせて内閣総理大臣に提出しなければならないとされています。そして、内部統制報告書は、公認会計士または監査法人の監査証明を義務づけることとされています。

 そこで、この財務諸表監査に加えて内部統制監査を求める目的及び趣旨についてお伺いします。

○櫻田副大臣 お答えさせていただきます。

 証券市場に対する投資者の信頼性を確保するためには、投資者に対して企業情報が適正に開示されることが重要であると考えているところでございます。ディスクロージャーをめぐる最近の不適切な事例については、開示企業における財務報告に係る内部統制が有効に機能していなかったのではないかということが指摘されているところであり、ディスクロージャーの適正を確保していくためには、財務報告に係る内部統制の強化を図っていくことが重要であると考えているところでございます。

 こうした観点から、本法案では、上場会社に対し、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者の評価と、その評価結果が適正であるかどうかについての公認会計士による監査、いわゆる内部統制監査を義務づけ、財務報告に係る内部統制の強化を図るものとしたものでございます。

○広津委員 どうもありがとうございます。よくわかりました。

 今までも、監査を行うに当たりましては、内部統制の評価を行うことが必要不可欠であったため、内部統制の評価はやってきたことではありますが、ここで、経営者による内部統制の整備と運用が必要であり、それに関して監査人が意見を述べるということが法律に明文化されることは、内部統制制度の充実のために極めて重要で大変すばらしいことであると感じております。

 しかしながら、日本公認会計士協会の調査によってもわかりますように、我が国では内部統制の評価に費やされる時間が海外に比べて大変少ないわけです。これは、日本における監査報酬、特に監査時間が諸外国と比較してかなり低いレベルであるため、監査手続をできるだけ省かざるを得ない状況であるということが理由と聞いています。そのため、監査の充実に関する根本的な解決策としては、諸外国並みの適切な時間をかけて内部統制の評価をできるだけの監査報酬及び監査時間が必要ということになります。

 この点につきましては、諸外国の監査及び監査報酬との比較も考慮した上で、いかがお考えでしょうか。

○三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 監査報酬につきましての調査は、これは日本公認会計士協会などにおいても実施はされておりませんが、監査時間につきましては、日本公認会計士協会において調査を行っているところでございます。

 この調査結果によりますと、我が国の監査時間数は、海外におけます監査時間に比べまして、一般に少ないものとなっているところでございます。さらに、その内容を見ますと、とりわけ監査計画、内部統制の評価にかける時間数が少ないとの調査結果となっているところでございます。

 監査の充実強化を図りますためには、公認会計士監査法人において、的確な内部統制の評価に基づき適切に監査計画が作成され、監査が実施されていくことが重要であると認識しております。このため、必要な監査時間数等の確保が行われますよう、必要な環境の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

 なお、こういった意識を幅広く醸成していくという観点から、証券取引法対象会社につきましては、平成十六年三月期から、有価証券報告書におきまして監査報酬の総額等の開示を求めることとしているところでございます。

○広津委員 どうもありがとうございます。

 ただ、監査報酬の開示をしただけでは、むしろ安い監査法人の方に顧客が殺到することになりまして、さらにコストダウンをしていかなきゃいけないということで、必ずしも解決にはならないと思いますが、状況を見守ってまいりたいと思っております。

報酬を開示しただけで「安い監査法人の方に顧客が殺到」なんてことが実際ありうるのだろうか? 逆に、高い監査報酬を払ってくれる企業に監査法人が殺到したりして??

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516420060512017.htm#p_honbun
第17号
平成十八年五月十二日(金曜日)

    午前九時二分開議
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○藤沼参考人 おはようございます。藤沼でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、カネボウライブドア等、公認会計士が絡んだ会計不祥事の発生は、まことに残念であり、大変に遺憾に思っております。日本公認会計士協会は、公認会計士の社会的使命を自覚し、公認会計士監査の信頼性の回復のため、自主規制を一層強化し、会員と一団となって監査の品質確保に全力で取り組んでいるところであります。国民の期待にこたえるよう最善の努力を行う決意であります。

 金融商品取引法案につきましては、ディスクロージャーの強化のため数々の制度が導入されております。協会は、次の五点において高く評価しており、ぜひ今国会での成立をお願いする次第であります。

 第一に、財務報告に係る内部統制について、経営者の評価と当該評価に対する監査人の監査という、いわゆる内部統制報告書制度の導入が織り込まれていることであります。

 協会は、財務諸表の適正性は、第一義的には、財務諸表の作成者である経営者がその職責を全うすること、次に、当該財務諸表の適正性を第三者の立場で監査し担保する監査人がその職責を遂行することにより確保されるものと御説明してまいりました。

 この制度は、財務諸表の作成者である企業が、財務報告に係る内部統制を整備し円滑に機能させることで財務諸表の質を確保するものであり、当該制度の導入により財務諸表の信頼性が向上するものと期待しております。

 第二に、有価証券報告書等の適正開示に関する経営者確認書の導入であります。

 これは、経営者が、有価証券報告書の記載内容の適正性についてみずから確認し、署名してその責任を投資家に明らかにするものであります。経営者が確認することとなると、作成段階において担当者間での緊張感と責任感が高まり、不実記載の防止には相当に寄与するものと期待しております。

 なお、経営者が確認書に署名できるのは、財務報告に係る内部統制が整備され、それが有効に機能していることが前提であります。その意味で、経営者確認書と内部統制報告書は表裏一体の関係にあると考えております。

 第三に、会社情報をタイムリーに投資家等に提供する四半期報告書の導入であります。

 企業を取り巻く経営環境は激しく変化しており、ビジネスリスクが高まっております。投資者からはタイムリーな情報開示が求められております。四半期財務諸表には、公認会計士はレビューにより検証業務を行うことになります。

 四半期報告書制度の導入は迅速かつ適正な会計処理が求められますので、会社の財務報告に係る内部統制が整備され、かつ、それが有効に機能していることが前提であります。その意味では、内部統制報告書と一体となって四半期報告書の制度化が図られることを協会は要望してきたところであります。

 第四に、虚偽記載を行った場合の経営者等の実行行為者及び当該企業に対する刑事罰、さらに幇助罪として監査人の刑事罰が強化されたことです。

 有価証券報告書等の虚偽記載は、自己責任において証券市場に参加している一般投資家の期待を裏切ることになりますので、個人金融資産の貯蓄から投資への移動を促進するためには、刑事罰が強化されたことは当然のことと理解しております。

 以上、内部統制報告書と経営者確認書、刑事罰の強化の三者が一体となって、ディスクロージャーの信頼性は相当に向上するものと考えております。

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○土井(真)委員 はい、わかりました。

 ぜひそういう努力を積み重ねて、これから会計不祥事が二度と発生しないように頑張って努めていただきたいというふうに思います。

 それでは、時間が参りましたので、最後に簡潔に、この証券取引等の改正案について一言御所見をいただきたいんです。

 今回、この改正は守備範囲が非常に広くなった、また監査の開示制度も非常に対象が広くなり、先ほど会長がおっしゃったように、内部統制報告制度あるいは四半期報告制度、新たにどんどん範囲、対象が広がっているということで、監査対象が著しく広くなったわけなんですけれども、協会としてあるいは業界として十分対応できるのかどうか、また対応するための準備は十分しているのかどうか、簡潔にお答え願えますでしょうか。

○小野委員長 藤沼参考人、簡潔にお願いします。

○藤沼参考人 簡潔にお話しさせていただきます。

 四半期報告は二〇〇八年の四月から開始されるということでございますので、それにまだ時間がありますので、対応できると思います。四半期報告は、フルの監査事務を全部行ってやるというような仕事ではなしに、むしろかなりレベルの高い監査の経験者がレビューという作業でもってやるわけですので、そういう面では対応できるのではないか。あとまた、半期報告制度という、今六カ月間の半期報告書というものをつくっておるわけですけれども、この作業がなくなるということなので、多分十分に対応できるのではないかと思います。

 また、内部統制の仕事については、これはかなり重たい仕事になると思いますけれども、これも二〇〇八年の四月ということなので、現在、企業会計審議会で監査のいわゆる実施基準、内部統制の実施基準をつくっておりますので、それができれば、それに対応した研修等、各事務所、当然ながら公認会計士協会でも研修を行いまして、二〇〇八年の四月からに対応したいというふうに思っております。
 以上でございます。

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○鷲尾委員 

 続きまして、内部統制の報告制度がつくられました、先ほど来皆様から御議論いただいているところではございますが。私も、これは質疑の中でお伺いしたんですけれども、アメリカの方では、コストがかかり過ぎるというふうな批判がございます。先生は、アメリカの方の実務を当然御存じでしょうし、先ほどおっしゃっていました国際会計士連盟の会長でもあらせられたわけで、アメリカの実務の前提に立った内部統制報告書制度だと思うんですね。では逆に、翻って、日本の監査実務から考えたときの内部統制報告書制度というのは、アメリカとの違いからいって、若干、例えばコストの面とかいうところでアメリカとは違った導入の仕方ができるんじゃないかなというふうに思います

 その点について、例えば上場企業にも規模の差があり、そして上場準備会社に対しても、例えばこの内部統制報告書制度を導入するとかそういう話になってきますと、ベンチャー企業がどんどん起こってくるというところにも非常にかかわってくる問題なのかなというふうに思っておりまして、そういう問題意識に立った上で、会長の御所見をちょっと伺いたいと思います。

○藤沼参考人 これは、アメリカの企業改革法で特に評判が悪い一つになっているのは、四百四条、内部統制の報告制度と監査制度、これについての費用、コストがかかり過ぎるという問題でございます。

 これについては、アメリカの方も、当初、大企業に採用したわけですけれども、かなり不平が、特にコストの面で事務量が大変であるというようなことから、コメントが非常にいろいろありまして、SECはラウンドテーブルというもので関係者を集めて議論した上で、それで大分手続等の見直しを行っております。

 日本では、内部統制を二〇〇八年四月から導入するということで、これはアメリカに学んで、もっと効率的で効果的な運用はできないのかということで検討して、現在、企業会計審議会の内部統制部会で、基準の枠組みと、あと今度は具体的な実施基準を今つくっているところでございます。

 そこの中で、やはり効率的に内部統制の評価とまた監査ができる、そういう枠組みをつくろうということで今議論が進んでおりまして、違いは、一つは、トップダウン式のリスク重視アプローチ、リスクのあるエリアに集中して企業の経営者は内部統制を評価する、要するに、もうじゅうたん爆撃のように全領域にわたって会計指針を持ちながら全部やるということではなしに、リスクのあるエリアを特定してやっていこうということ。

 あと内部統制の不備の区分も、アメリカは三区分というような形で、統制の不備があるものを三つに分けて対応していこうということなんですけれども、日本はもうちょっと単純化して二区分でやっていこうとか、あと最後に、これは一番大きなあれだと思いますけれども、アメリカは経営者の評価のほかに監査人自身が評価するという手続、監査人が内部統制自身を評価するという、経営者はここまでだというふうに言っているんだけれども、監査人は、何かそれ以外にちょっとやってみよう、そこで何か問題があると、やはりちょっとエラーがあるからさらにもっとやってみようというような、だから手続が際限なく広がる、こういうことがありまして、仕事量がふえたというふうに言われているんですけれども、これは、ダイレクトレポーティングという言葉で言われているわけですけれども、これを日本ではやらない。

 基本的には、経営者が、先ほど言ったトップダウンアプローチでどこにリスクのエリアがあるのかということを決めたら、それについてリスク評価の対象エリアがそれでいいか、当然ながら監査人と議論するわけですけれども、そこで決まれば、監査人が、ほかのところで何かあったところ、どんどん領域を広げていくというようなことはやらないということで、かなり効率的な監査ができるのではないかと。

 ただ、私自身は、そういうことは言っておっても、日本型で、もともと日本は、御承知のように、欧米と比べると監査に使う時間というものが非常に少ないという現実があります。その中で、さらに適当にやってよという話になってきますと、内部統制をやっているのに、実際には、トータルしても内部統制の監査実行前の欧米の水準にやっと近づいたぐらいの話になってしまっては全く意味がないということなので、その辺のところは十分に注意して実行しなくてはいけないというふうに思っております。

 以上です。

○鷲尾委員 わかりました。

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○小野委員長 これにて討論は終局いたしました。

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○小野委員長 これより採決に入ります。

 まず、古本伸一郎君外六名提出、証券取引委員会設置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○小野委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、小沢鋭仁君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○小野委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○小野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、小沢鋭仁君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○小野委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

○小野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

結局のところ、具体的な中身は実施基準次第、ということのようで。果たしてどんな「基準」が出てくるのやら。