商事法務No.1754

会社法「株式会社の業務の適正を確保する体制に関する法務省令」(いわゆる内部統制省令)案に関する法務省参事官殿の発言より

..会社法が大会社に要求しているのは、そのような体制の整備に係る決定であり、ある種のレベルの体制を整備することではありません。内部統制システムの整備自体は、会社法を待つまでもなく、各社の事情に応じて、業務執行者の善管注意義務の一環として求められるものであり、会社法の施行によりその整備が義務づけられることとなるようなものではありません。業務執行者が善管注意義務の一環として構築していたはずの内部統制システムを引き続き構築・維持していただければよいということです。
(商事法務No.1754 2006 1/5-15合併号24ページ、太字は引用者による)

あのねぇ..そーゆーことなら、初めからそう言ってほしかった..orz(失意体前屈) 今や日本全国津々浦々、各社の総務・法務担当者がこの法務省令案を前にしてアタマを抱えているというのに。巷で山のように解説書の類が、弁護士、会計士、コンサルタントのセンセイ方によるセミナーの類が、氾濫しているというのに。
内部統制の中身については問わない、現状を取締役会で確認し、その概要を開示するだけでOKだとすれば、何も大騒ぎする必要はない、もし大騒ぎしている会社があるとすれば、その会社の取締役はすでに善管注意義務違反の疑義があるということになる。
しかし、もともとは「会社法制の現代化に関する要綱」(平成17年2月9日、法制審議会総会決定)において、

(5)内部統制システムの構築に関する決定・開示
?内部統制システムの構築の基本方針については,取締役会が設置された株式会社においては取締役会の専決事項とし(商法260 条2項,商法特例法21条の7第3項各号),当該決議の概要を営業報告書の記載事項とするものとする。
?大会社については,内部統制システムの構築の基本方針の決定を義務付けるものとする。

とされていたことから、ここでいう「基本方針」の決定という文言は、「将来に向けて実施すべき事項」の決定という理解が一般的なのではないか?既存の体制を「引き続き構築・維持」することが果たして「基本方針」といえるのか?「構築の基本方針」を決定したあとに、(具体的な)「構築」を実施するというのが、常識的な日本語の用法ではないのか??
それにしても、あまりに人騒がせな法令ではある。