「財務報告に係る内部統制の評価及び監査」(公開草案)に対するコメントの概要

法務省の新「会社法法務省令案の公表に続いて、金融庁から公開草案に対するパブリックコメントの概要が発表されました。なぜか法務省金融庁もトップページにリンクを張らず、わかりにくいところに掲載しています。しかも金融庁のほうは紙をスキャンしたPDFなのでテキストのコピーもできません..;;)

さてコメントに対する金融庁の対応案ですが、気になる点をピックアップしますと、

(1)コメント(No.I-18)

4つの目的(引用者注:業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、法令の遵守、資産の保全)が相互に関係している点を言及すべき。

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(対応案)

「内部統制の目的はそれぞれに独立しているが、相互に関連している」旨を、「1.内部統制の定義」に記載する。

「それぞれに独立しているが、相互に関連」という言葉自体が意味不明ですが、そもそも次元の異なる概念を4つ並列的に並べるからこういう混乱が起きるのではないでしょうか?例えば「法令遵守はもとより、業務の有効かつ効率的な遂行を通じて、資産の保全を図るとともに、財務報告の信頼性を確保する」のように、ふつうの人にわかる表現にすべきところです。

(2)コメント(No.II-8)

談合・リコール問題・食品衛生管理などは「財務報告」以外の部分と解してよいか。

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(対応案)

ご指摘の部分は、基本的には、財務報告に直接影響しないと考えられる。

しかし、金融庁は別の箇所でこのように述べています。

財務報告の信頼性に関しては、例えば、新製品の開発、新規事業の立ち上げ、主力製品の製造販売等に伴って生じるリスクは、組織目標の達成を阻害するリスクのうち、基本的には、業務の有効性と効率性に関連するものであるが、会計上の見積り及び予測等、結果として、財務報告上の数値に直接的な影響を及ぼす場合が多い。したがって、これらのリスクが財務報告の信頼性に及ぼす影響等を適切に識別、分析及び評価し、必要な対応を選択していくことが重要になる。

「談合・リコール問題・食品衛生管理など」は、まさしく「新製品の開発、新規事業の立ち上げ、主力製品の製造販売等に伴って生じるリスク」そのものでは?そうでないとすれば「結果として、財務報告上の数値に直接的な影響を及ぼす場合」に該当しないという見解なのでしょうか?ということは「これらのリスクが財務報告の信頼性に及ぼす影響等を適切に識別、分析及び評価し、必要な対応を選択していく」対象にならないように読めますが..
結局のところ、「財務報告に係る」「内部統制」なるものの概念を整理しないまま、個別の事例を解釈しようとするとこのような矛盾や混乱が生じるということではないかと思量いたしますが、いかがでしょうか。

ほかにも突っ込みどころ満載ですが、また場を改めて論じてみたいと思います。