地球温暖化対策の中期目標に対する意見

地球温暖化対策の中期目標に対する意見の募集(パブリックコメント)について

2009年4月17日
内閣官房
1.趣旨
政府は、本年6月までに、地球温暖化の中期目標(2020 年の温室効果ガス排出量についての削減目標)を決定することとしており、このたび、その選択肢を公表しました。
この中期目標は、(1)実現には政府・企業・国民の幅広い努力が必要となること、(2)我が国の社会経済に大きな影響を与えるものであることから、国民的な議論を十分に経た上で決定することが必要です。
したがって、広く国民の皆様の意見を伺うため、以下のとおり御意見を募集します。
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3.意見提出の要領
意見書に氏名(法人・団体の場合は法人・団体名と担当者名)、住所、電話番号、電子メールアドレスを明記の上、意見提出期限までに電子メールにて提出してください。
提出先メールアドレス : ondankakondankai@cas.go.jp
※ メールに直接意見の内容を書き込むか、添付ファイル(ファイル形式はテキストファイル、マイクロソフト社Word ファイル又はジャストシステム一太郎ファイル)として御提出ください。
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4.意見募集期限
平成21年5月16日(土)(必着)
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(お問い合わせ先)
内閣官房副長官補付(地球温暖化問題に関する懇談会事務局)
TEL : 03-5253-2111(内線:82658)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai07kankyo/tyuuki_iken_syousai.pdf

ひさびさのパブコメ提出。提出期限は明日。

地球温暖化対策の中期目標に対する意見

1.ふさわしいと考える我が国の温室効果ガスの中期目標(2020年)
 
  2005年比−4%(1990年比+4%)
 
2.理由・提言
 
(1)我が国産業は、現状すでに世界トップクラスのエネルギー効率を実現しているため、さらなる効率化には、諸外国に比べて過大な経済的(投資・費用)負担が必要となる。
我が国が、諸外国と同水準の削減目標を設定した場合、その結果として、我が国産業の国際競争力は相対的に低下し、国内製造拠点の海外流出(いわゆる産業空洞化)を含む生産の海外シフト、および国内景気の悪化を招くこととなる。
即ち、生産の海外シフトは、よりエネルギー効率の低い国における生産拡大により、温室効果ガスの排出量を増加させ、却って地球温暖化防止を阻害する懸念がある。
また、国内景気の悪化は、企業においては利益の減少、政府・自治体においては税収の減少、家庭・個人においては賃金収入の減少を、各々招くこととなる。その結果、温暖化防止のための企業の設備投資、公共政策の実行、エコ家電・自動車等への買い替え等の原資を確保できなくなる懸念がある。
  
(2)仮に、我が国が高い削減目標を設定し、これを達成することができなかった場合、外国から巨額の排出権購入を余儀なくされ、すでに破綻の危機に瀕している国家財政をさらに圧迫することとなる。
その結果、我が国にとって喫緊かつ深刻な課題である年金・医療・雇用等の諸問題の解決が困難となり、国益を損ねることとなる懸念がある。
 
(3)我が国の温室効果ガス排出量は、世界全体の5%程度に過ぎず、仮にこれを大幅に削減できたとしても地球温暖化防止への寄与度は極めて低く、数値の意味はほとんどないに等しい。
 
(4)太陽光発電ハイブリッドカー等の新しいエネルギー技術を導入した装置について、現時点の技術水準では、装置の製造・修理・廃棄に至るライフサイクルで考えた場合、必ずしも温室効果ガスの排出が少なくなるとはいえないのではないか。少なくとも、定量的に検証されていないし、国民に正確な情報が伝達されているとはいえない*1
これらの装置は技術的に未成熟であるがゆえに、将来の期待水準に対して高コスト・低性能である*2。従って、技術革新の進捗状況を評価した上で、効果的な普及ができるタイミングを見極める必要がある。
将来的には、技術革新により、温室効果ガスの排出を相当程度抑えられることが期待できるとしても、高い削減目標の設定は、これら未成熟な技術に依拠した装置を性急に普及させることにつながり、却って地球環境への負荷を高めてしまう懸念がある。
 
(5)地球温暖化の有無に関わらず、化石燃料の枯渇と価格高騰は避けられず、我が国のみならず世界全体がエネルギー構造の転換を余儀なくされることは確実であろう。
そうだとすれば、削減目標を政治的に設定し強制するまでもなく、市場原理に基づくエネルギー開発や価格競争が行われ、結果として「低炭素社会」の実現に向けた動きが加速化するのではないか。
技術や市場の成熟度を無視し、政治的に削減目標を設定すれば、短期的には何らかの「成果」を上げることができたとしても、企業や国民の温暖化防止に向けた取り組みに無理を生じ、その持続可能性を阻害することになる懸念がある。
 
(総括)
以上に述べたように、我が国として、実現困難な温室効果ガスの削減目標を設定することは、地球温暖化防止の観点からも、我が国の国益の観点からも適切でないことは明らかである。
世界トップクラスのエネルギー効率を実現している我が国が、その優位性を活かして世界をリードしていくことなく、逆に自らの足かせとなるような削減目標を「約束」してしまうならば、国税による巨額の排出権購入、非効率な設備投資、まだ十分使える家電・自動車の買い替え等、多くの国民が過大な経済的負担を強いられるばかりか、目標未達に対する諸外国からの厳しい批判にさらされることとなるのは、誠に理不尽というほかない*3
かかる事態になれば、我が国はまさに「世界の笑いもの」になるだろう
我が国にとって真の国際貢献とは何か、国益とは何かを、政府および政治家は、真剣に考えるべきである。
これらを踏まえつつ、国際社会において我が国にも応分の貢献が求められること等を勘案し、米・EU*4が掲げる中期目標と同等(限界削減費用が同等)となる「2005年比−4%(1990年比+4%)」を我が国の削減目標とすることが妥当と考える。

以 上

*1:「高速道路一律千円」などの愚策は論外として、装置の運転時の環境性能のみに着目した「エコポイント」や「スクラップインセンティヴ」などは、国民をミスリードする誤った政策の典型である。

*2:かつて「IT革命」のブームに踊らされ、現在なら信じられないほど低性能のコンピュータやバグだらけのソフトウェアに大金をつぎ込んだ苦い教訓を想起されたい。

*3:アリとキリギリスの寓話に例えれば、一所懸命に努力して節約してきたアリ(日本)が、さんざん遊びほうけて無駄遣いしているキリギリス(欧米諸国)に、「もっと節約しろ。できなかったらオレたちに金を払え」と脅されているようなものである。

*4:なぜかほとんど報道されていないが、EUが東欧諸国を取り込んだことで何の努力もしないで削減目標を「達成」している欺瞞も、もっと広く知られるべきである。